マンション購入後に建て替えの可能性もある? 古いマンションの建て替えについて

マンションの購入を検討する際、気になるのがマンションの耐用年数です。購入を予定しているマンションに対して、「寿命はどれくらいか」「建て替えが必要なのか」といった心配をしている人も少なくないでしょう。この記事では、マンションの建て替えについて詳しく解説していきます。ぜひマンションを購入する際の参考にしてください。

マンションの建て替えって本当に行われている?

マンションには耐用年数があり、その耐用年数が過ぎてしまったマンションは「建て替え」を行うことになりますが、建て替えられたマンションはあまりないというのが実情です。

国土交通省「マンション建替えの実施状況」によると、これまでに建て替えられたマンションは累計で280件弱しかありません(2018年4月1日現在)。そのため、マンションの建て替えは決して一般的なものとはいえませんが、それでも過去に大量に供給されたマンションの老朽化が進んでおり、今後避けて通ることのできない問題です。

また、マンションの建て換えを検討するのであれば、マンションの「寿命」に関する判断基準も明確にしておく必要がありますが、マンションの耐用年数には明確な基準があるわけではありません。漠然と「50年前後」といわれることもありますが、これも全てのマンションに当てはまるわけではありません。

50年前後がマンションの寿命といわれているのには、「減価償却」の耐用年数が影響しています。収益用マンションなどで建物の経年劣化を経費として計上できる仕組みを減価償却と呼びますが、「減価償却資産の耐用年数等に関する省令」ではRC造マンションの耐用年数が47年と定められているのです。

ですが、実際には耐用年数が100年以上といわれるマンションも多くあり、50年経過したからといって必ずしも建て替えが必要になるわけではありません。逆に、50年経過していなくても、管理状況が悪く、早急に建て替えるべき建物もあります。

特に1981年の「新耐震基準」の施行前に建てられた「旧耐震基準」のマンションには注意が必要な建物もあります。コンクリートの質や鉄筋の量などが新耐震基準のマンションとは異なるため、大きな地震が起こった場合、新耐震に比べ被害が大きくなる恐れがあります。耐震改修工事には大きな費用がかかりますので、改修工事を行うよりも、必要な修繕に費用を使うマンションも多いです。

マンション内から、思い切って建て替えようという意見が出る事もありますが、冒頭で述べたように、現実には建て替えがあまり進んでいません。では、なぜマンションの建て替えが進まないのでしょうか?

なぜマンション建て替えが進まないの?

マンションの建て替えを決定するには、「建て替え決議」をとる必要があります。

まず、理事長などの招集者が管理組合の集会を開催する旨を区分所有者に通知することが必要になります。通知は、一般的に少なくとも会議開催の2ヶ月前まで行っておく必要があり、同時に「建て替えを必要とする理由」や「建て替えをしないときに建物を維持するのに要する費用の額」なども通知することが義務付けられています。

また、集会を開催して「建て替え決議」をとるためには、「区分所有者数の5分の4以上の賛成」と「議決権の5分の4以上の賛成」が必要であることが「区分所有法」で定められています。

ここで、5分の4の賛成を集めることができればよいのですが、簡単にはいかないケースがほとんどです。

まず、立ちはだかるのが費用の問題です。建て替えで大きな金額が必要になる場合、費用を捻出できない人は建て替え反対の立場に回ってしまいます。また、住民が高齢化している場合には、さらに反対派が増える傾向にあります。

反対理由の例としては、「このマンションに永住するつもりで買ったのに」「ここを終の棲家にしたい」という方が多いです。また、マンションが分譲だけではなく賃貸に出されている部屋がある場合も、問題が複雑になります。借地借家法を理由に賃貸人が出て行かない場合、賃貸契約を解消できないためです。

こういった状況を受けて、2014年に「マンションの建替えの円滑化等に関する法律」の改正が行われました。一部の住民が反対しているとしても、耐震性などに問題がある場合にはできるだけ早く建て替えを行ったほうが安全だからです。

この改正には、2011年の東日本大震災が大きく影響を与えています。「マンションの建替え等の円滑化に関する法律」と、名称もわずかに変更されました。この改正によって、耐震性不足のマンションの建替えが円滑できるようになりました。

例えばマンションの解体・敷地の売却には区分所有者全員の同意が必要でしたが、改正後は5分の4の賛成で解体・売却が可能になっています。建て替えの資金捻出のために、容積率緩和の特例も加えられています。

マンションの建て替えの負担費用のあれこれ

ここまで、マンション住民の反対によって建て替えが進まない問題を説明しましたが、他にマンションの建て替えで問題になるのが、建て替え費用の負担です。ここではマンションの住民が負担する費用についての疑問に答えていきます。

マンションの建て替えをする場合には誰が費用を負担するの?

分譲マンションは「区分所有」であるため、マンションの住民(区分所有者)が負担することになります。ただし、マンションの状況によって負担する金額が大きく変わる可能性があります。

負担する建て替え費用の目安はどれくらいか

首都圏のマンション建て替え事例では、1戸あたり1,000万円が相場です。ただし、これは建て替え時に部屋を増やして売却するなど、「収益」があった場合も含まれています。もともと空室があった、建て替え後に部屋数が減ってしまったなどで、収益が全くないマンションの場合は、負担金が1,500万円を超えることも珍しくありません。逆に、戸数を倍に増やして「負担金0円」で立て替えることに成功した事例もあります。

負担する建て替え費用が高くなるのはどのようなマンションか

建て替え費用の負担を少なくするには「収益」をあげるしかありません。つまり、戸数を増やせないマンションは収益をあげることができないため、負担する費用が高くなってしまうということになります。

マンション全体の述べ床面積は、建ぺい率・容積率・高さ制限などでほぼ決まってしまいます。そのため、敷地面積ぎりぎりに建っているマンションや、容積率や高さ制限の厳しい区域に立地するマンションはほとんど戸数を増やすことができません。収益をあげて費用の負担を減らすためには、今よりも大きな建物を建てられるかどうかが重要になります。

マンションの建て替え費用の内訳はどうなっているのか

ここで説明しているマンションの建て替え費用の内訳は

「古いマンションの解体費用」
「新しいマンションの建築費用」
「調査・設計費用」
「事務経費」
「借入金の利息」

の5つになります。

ただし、それ以外にも「引越し代」「仮住まいの賃料」の負担が発生します。引越しは往復2回、工事期間中2年程度の仮住まいということを考えると、住人は建て替え費用に加えて300万円から400万円ほどの費用を用意しておく必要があります。

建て替え費用を払えない場合にはどうなるのか

建て替え費用を用意できず、ローンも組めないような場合は、2つの選択肢があります。ひとつは「新しい建物の狭い部屋に移る」という方法です。現在の住戸の評価額と同等の評価額の住戸に住めば、負担金は不要という計算になります。ただし、かなり部屋の面積は小さくなることを覚悟する必要があります。

もうひとつは、「住戸の権利を売る」という方法です。思い切って権利を売って、ほかの中古マンションなどに移ってしまえば、仮住まい費用などを節約することができます。

建て替えを回避するために覚えておきたいマンションの選び方

マンションの建て替えの可能性を少しでも避けたいという方には、購入時に先に述べた「新耐震基準」に適合しているかどうかをチェックすることが大切です。

建築基準法施行令の改正で新耐震基準が施行されたのは、1981年6月1日です。新耐震基準に適合しているのはこの日以降に「建築確認」を受けた建物であり、この日以降に竣工したからといって必ずしも新耐震基準に適合しているというわけではないので注意が必要です。工事期間などを考えると、1982年築の建物でも旧耐震基準に沿って建てられたマンションが少なくないことが想定しておく必要があります。

また、新耐震基準に適合している物件でも管理が悪く、老朽化が進んでいる場合は注意が必要です。鉄筋コンクリートの劣化は、酸性雨などによるコンクリートの「中性化」によって起こります。やがて内部の鉄筋が錆びていき、マンションの躯体としては機能しなくなってしまいます。

逆に旧耐震のマンションでも、しっかりと維持修繕がされているマンションは今後も良好な管理状況が続く可能性が高く、管理が悪い新耐震の物件よりも、長く住むことが出来ると思います。

もしマンション購入後に建て替えが決まりそうになった場合は……

マンションを購入した後に建て替えが決まりそうになった場合は、すぐに管理組合の資金計画を確認する必要があります。確認の上でマンションに残るのか、権利を売却してほかに移るのかを自分の意志で判断することが大切です。

たまたま、立地や法的条件がよく、戸数を倍にして負担金ゼロで立て替えることができることもあります。しかし、そういった少数の幸運な例を除けば、ほとんどの場合は負担金が必要になります。

さらに、注意しておきたいのは建て替えの際に「既存不適格」の物件であることが発覚するというケースもあります。マンションの建設時よりも法律の制限が厳しくなっている場合に起こるもので、マンションの現状が法律の許す範囲をオーバーしていることを意味しています。

つまり、建て替えを行うと現状の建物より小さなものしか作ることができないということです。建て替えの利益がほとんど見込めないうえに、新しい住戸はもとの住戸よりも狭くなってしまいます。建て替えを考慮しながら購入する場合には、こういった可能性も想定しておく必要があります。

このように、マンションの建て替えを行うと、非常に大きな負担が発生するリスクがあります。購入後すぐに建て替えが決まってしまうと、せっかく立てた資金計画も無意味になってしまいます。建て替えのリスクを回避するためにも、管理状態などをしっかりチェックしてからマンションを購入することが大切です。

万が一購入後に建て替えが決まりそうになったら、人任せにせず自分の意志で行動することが大切です。判断が難しい場合は、建築や建替えの専門家に相談してみるのもひとつの方法です。

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